2011/04/06

沈下した家をどう直すか?(続き)

「俺はクニマスか!!!」

 と突っ込まれてしまったほど、その驚きと興味を隠せなかった出会いがありました。

注:クニマスはサケ科の淡水魚。環境省のレッドリストで「絶滅」とされていましたが、2010年に山梨県西湖で生息が発見されています。


高知県の曳家職人・岡本直也さん。
かさ上げ・家屋移動業専門。
岡本さんのホームページはこちら


地震で傾いてしまった住宅を直すために、今、全国の曳家職人が被災地に集められているそうです。岡本さんも、浦安市から声をかけられ、上京していました。


なぜ、曳家さんが被災地に・・・?


恥ずかしながら、曳家とは重要文化財などを保存するための伝統技術だと思っていたので、その技術が沈下修正に生かされるものだと知りませんでした。(日本曳家協会のホームページ


浦安には、ジャッキアップや樹脂注入などの方法では対応しきれないほど傾いてしまった住宅がたくさんあります。このような住宅は、地盤や基礎をしっかり対処しておかないと、今後も同じことを繰り返してしまいます。


しかし、すでに建っている住宅の地盤改良や基礎を直すことは決して簡単ではありません。そこで登場するのが、曳家さん。 家を持ち上げておいて、その間に地盤や基礎を直すというのです。



手書きメモで失礼
コストが気になるところですが・・・、
こればかりは状況によるので何とも言えません。

1000万円はかからないけど、数百万円はかかるらしい。


ちなみに1階30坪・2階25坪程度の家を持ち上げるのに、約20日間かかるそうです。



20日間・・・



そんなに手間のかかることなのでしょうか・・・?
それこそジャッキアップで簡単にできるのでは・・・?



職人さんに向かって失礼を承知で、聞いてみました。




「住宅を傷めずに持ち上げることは、決して簡単ではありません」
(by岡本さん)




傷めないためには、その家のつくりがどうなっていて、基礎のつくりがどうなっているかを読み取る力が必要です。
次に、ジャッキアップを取り付ける位置。基礎に据え付けるときのことを考えて、通し柱の座るところは避けつつ、そのギリギリ近くをねらいます。
持ち上げるときには、内部の壁のチリ部分(接合部)が壊れてしまわないように持ち上げなくてはなりません。


いずれも、経験から学ぶもの。職人から職人へ受け継がれていくもので、マニュアルや取り扱い説明書などはありません。



「ちゃんとした技術をもつ曳家職人は全国に100人もいない」
(by岡本さん)




基本的な技術が身に付くには、仕事がたくさんある状態で4年かかるという曳家の仕事。仕事が少なくなった今、意欲ある若者が入ってきても、一人前になるのに何年もかかってしまい、それまで続けらず辞めていくケースがほとんど。多くの伝統技術と同様、次世代が育たない現状があります。



岡本さんは、まもなく50歳。



曳家の仕事がたくさんあって、先代や職人さんたちにしごかれながら技術を身に付けた最後の世代。技術も矜持も持ち合わせた数少ない職人さんの一人。


やっぱり、クニマス発見!と並ぶ、幸運な出会いだったのでしょうね。



★印刷所に確認しました。ビルダーズ05号は問題なく5/27に刊行いたします。お楽しみに!

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